概要
一般的にスマートフォンのオートフォーカス(AF)は、「位相差検出」方式*1を採用しています。この方式ではイメージセンサー上の撮像用画素の一部を位相差検出用画素として使用するため、撮像時には位相差検出用画素の位置に画像情報を補間する必要がありました。位相差検出用画素を増やし過ぎると補間が難しくなり画質が劣化してしまうため、位相差検出画素の配置密度には限界があります。これがAF性能の制約となっていました。
*1) 入射角度の異なる複数の光線の情報を使って最適なフォーカス位置を検出する方式
これに対して「全画素オートフォーカス」方式のイメージセンサーは、撮像用画素の全てを位相差検出用画素としても使用できます。位相差情報を取得する密度が飛躍的に高まったことで、これまでフォーカス合わせが難しかったシーンでも安定したAF動作を実現します。画面内のどの位置に被写体があってもフォーカスを合わせることができることに加え、位相差情報を多く集められるために暗い環境でも安定してAFが動作します。また、画像信号として使う際の補間処理が不要となり、画質の劣化を起こしません。
参考動画①:暗いシーンでも迷うことなく正確にフォーカスが合う
従来の位相差AFでは追尾が難しかった、暗い環境下で手前から後ろに移動するような動きのある被写体でも、全画素オートフォーカスでは、動きに合わせスムーズにフォーカスが可能です。
参考動画②:輪郭がはっきりしない被写体に対するフォーカス性能向上
輪郭がはっきりしないケーキのの飾りなど、従来の位相差AFではフォーカス合わせが難しかった被写体でも、全画素オートフォーカスでは、安定してフォーカス が動作します。
技術解説
全画素AFを実現する複数の方式を開発・提供
ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社は、さまざまなイメージセンサーのタイプに向けて、全画素オートフォーカスを実現する複数の方式を開発・提供しています。
① Dual PD 方式 - 全画素 AF の基本となる方式
② 2 x 2 OCL 方式 - 微細・高画素の中型センサー向けの方式
③ Octa PD方式 - 高感度・高画素をめざす大型センサー向けの方式
Dual PD方式
Dual PD方式は、左右2つのPD(フォトダイオード)をペアにして1つの画素とする方式です。この時、OCL(オンチップレンズ*2)を共有する構造にすることで左右のPDに別々の入射光が入るため、位相差を取得することができます。画像信号として使う際は、左右のPDの情報を足すことで位相差の影響を打ち消します。
Dual PD方式は全画素AFの基本方式として使用されています。
*2) 光を取り込むための集光レンズ
2 x 2 OCL方式
2 x 2 OCL方式は、Quad Bayerセンサーをベースに、1つのOCLを同色4画素で共有する構造を採用しています。Quad Bayerの特長と全画素AFの特長の両方を有するのはOcta PD方式と同様ですが、Dual PD方式の「画像信号として使う際の左右のPD出力の加算」が不要なため、解像度を高めやすく、中型センサーに適した方式です。
Octa PD方式
Octa PD方式は、Quad Bayer配列のセンサーに対してDual PD方式を掛け合せた技術です。Quad Bayer方式の特長である「高感度」「HDR対応」を維持しながら、全画素AFの優れたAF性能をも実現できる大型センサーに適した方式です。特にHDR動作時に長露光・中露光・短露光の全ての画素で位相差が取得可能な点はOcta PD方式だけの特長で、被写体の明るさによらず高速なAF動作を実現します。
HDRと全画素オートフォーカスの両立
窓の外が明るい室内のシーンでフォーカスを窓から手前の被写体に移すと、SDR*では窓の外が白飛びしフォーカスに時間がかかりますが、全画素オートフォーカスではHDRと両立しつつ高速にフォーカスが動作します。
*Standard Dynamic Range
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