概要
ソニーのマルチスペクトルイメージセンサー技術は、各画素のフォトダイオード上にマルチスペクトルフィルターを形成し、可視光から近赤外光まで複数の波長の光を同時に撮像できる技術です。この技術を搭載したマルチスペクトルイメージセンサーは、独自の専用信号処理ソフトウェアとの組み合わせにより高解像度を維持しながら41波長分の画像データをワンショットで取得でき、さまざまな場面で活用できます。
技術解説
フィルターとソフトウェアの組み合わせでマルチスペクトルと高解像度を両立
ソニーのマルチスペクトルイメージセンサーには8種類のパターンのフィルターが搭載されており、ワンショットで各フィルターから得られる2次元画像を取得することができます(図1)。このパターンを増やすほど多くの波長を取得することができますが、空間解像度が下がってしまうデメリットがあり、取得できる波長の数と空間解像度はトレードオフの関係です。
ソニーのマルチスペクトルイメージセンサーは、専用に設計されたソニー独自の信号処理ソフトウェアと組み合せることで、8種類のフィルターから得られる画像データから41波長分(450nm~850nm、10nm刻み)の画像データを生成することができます。41種類のパターンのフィルターを搭載すると空間解像度が低下してしまいますが、フィルターのパターンを8種類にとどめ、信号処理ソフトウェアを活用して取得できる波長の数を増やすことで、マルチスペクトルと高解像度を両立しています。
イメージセンサーで分光することにより、マルチスペクトルカメラの小型化を実現
マルチスペクトルカメラの多くは一般的なカメラと比べて大型です。これはイメージセンサー単体で分光することができないため、プリズムや回折格子といった高価で大型の分光器を持つ必要があるためです(図2)。ソニーのマルチスペクトルイメージセンサーはマルチスペクトルフィルターを内蔵しており、イメージセンサー単体で分光することができます。そのため、一般的なカメラと変わらないサイズのマルチスペクトルカメラを実現でき、これまでのマルチスペクトルカメラでは重さや大きさの制約から搭載が難しかった農業用ドローンなどに活用することができます。
図2. マルチスペクトルカメラの比較
活用事例
農地の観察
現在、農業界では上空からカメラで農地を撮影し、作物の育成状況を正確に把握することで、データに基づく栽培管理を行う取り組みが進んでいます。しかし、撮像した作物の色情報だけで育成状況を判断するのは容易ではありません。マルチスペクトルイメージセンサーを利用して撮影することで、農作物の分光画像から育成状況や分布を効率よくモニタリングでき、水や肥料を与える最適なタイミングを把握しやすくなります。
関連する分野
作物の収穫
作物の収穫時期の見極めは、その品質に大きく関わるため重要です。しかしながら、色や形状など作物の外観だけでその判断を行うことは難しく、非可視光を使って作物の成熟度に応じて反射特性の変化をとらえる試みが進められています。可視光と非可視光を同時に扱うことができるマルチスペクトルイメージセンサーは、外観の情報と成熟度の情報を同時に得ることができます。これにより最適な収穫時期を見極めやすくなります。
関連する分野
農業機械の自動運転
人手不足の問題を解消するため、自動で走行する農業機械のニーズが高まりつつあります。自動車の場合、道路の白線や標識を頼りにしながら自動運転を実現しますが、農地の場合、頼りにできる目印が少なく、さまざまな情報を収集し、環境を認識することが不可欠です。マルチスペクトルイメージセンサーは、物質ごとの反射特性の違いをとらえることに適しており、植物や土壌、水たまりなど周辺の環境を効果的に識別しやすくなります。これにより、自動走行の経路選択の正確性が増し、農業機械の自動運転の実現に貢献します。
関連する分野
資料ダウンロード
IMX454製品概要
製品の概要や特長、仕様をまとめた資料です。
関連製品&ソリューション
-
イメージセンサー
マルチスペクトルイメージセンサー
この技術を搭載したマルチスペクトルイメージセンサーの製品情報は
こちらです。
購入相談・問合せ
ご購入先を探す
仕様書や見積もりを依頼する
お知らせ
メール配信の登録産業用およびセキュリティカメラ用イメージセンサーの製品・技術、イベント、サービスなどの情報をお届けします。