概要
透過型液晶マイクロディスプレイは、主にビジネスプロジェクターの表示デバイスとして使用されています。ビジネスプロジェクターは会議室など明るい環境で使用されるため、明るさが最も重要な性能となります。そのため液晶マイクロディスプレイにも高い透過率性能が必要です。また、高精細化に加えて強力な光源からの光に耐える高耐光性なども求められています。
こうした要望を受け、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社(以下、SSS)の透過型液晶マイクロディスプレイでは、微細TFT技術、ダブルマイクロレンズ技術、高耐光TFT技術などを用い、0.76型で1万ルーメン、1.0型で2万ルーメンクラスの高輝度プロジェクターを実現可能にしました。
プロジェクター用表示デバイスに求められる性能 | |
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高輝度化 | 光を高透過・高反射することでで光の利用効率を高める |
高精細化 | 多画素化により高精細・高解像の映像を表示する |
小型化 | 投射レンズや光学メカの小型・軽量化を実現する |
高コントラスト | より引き締まった黒表示でメリハリのある映像を表示する |
高耐光 | 強い光を照射してもデバイスの画質・特性を維持する |
高耐久 | 長時間の使用を可能にする(メンテナンスフリー) |
技術解説
高開口TFT技術<HTPS>
透過型液晶マイクロディスプレイには、230万個*1の画素が縦横に配列されており、その画素をON/OFFするトランジスタが画素ごとに配置されています。また、それらに加えてトランジスタのON/OFF信号を送るゲート線と、画素の明るさ信号(電位)を送る信号線が網の目のように配線されています。トランジスタ、ゲート線、信号線は光を通さないため、これらを除く領域が、光が画素として透過する領域=開口部となります。したがって、透過型液晶マイクロディスプレイの透過率を上げるためには、トランジスタを小さく、各配線を細くする必要があります。
SSSはこれまでもイメージセンサープロセスで培われた微細加工技術を活用して高効率な透過型マイクロディスプレイを開発してきましたが、最新世代では、各レイヤーの接続にコンタクトプラグを採用し、従来品比20%以上の開口率*2向上を実現しました。
*1) WUXGAの場合。
*2) 画素面積に対する開口部面積の比率。
高透過ダブルマイクロレンズ技術<HTPS>
透過型液晶マイクロディスプレイの光利用効率向上には、微細TFT技術による高開口化に加え、マイクロレンズが重要な技術となります。マイクロレンズとは、一辺数ミクロンの画素開口部から効率よく光を透過させるために画素単位で設置しているレンズを指します。マイクロレンズの効率を最大限に引き出すため、液晶マイクロディスプレイの光入射側に加え、光出射側のTFT基板にもマイクロレンズを搭載するのがダブルマイクロレンズ技術です。入射側のマイクロレンズは、画素の開口部に光を集光させ、出射側のマイクロレンズは、透過光の広がりを抑える役目を担います。半導体製造技術のフォトリソグラフィーを用いることで、非球面形状も高精度に作成することが可能です。この技術により、高精細パネルの光利用効率を1.5倍*3にすることに成功しました。
*3) マイクロレンズ非搭載パネル比。
高耐光TFT技術<HTPS>
一般的に液晶ディスプレイは画素ごとに明るさを決定する信号(電位)を送り画像を表示します。送られた電位は、画素電極と対向電極で構成される容量および、バッファとして画素ごとに設けた保持容量で次の電位が送られるまでの期間保持されています。一方、透過型液晶マイクロディスプレイは、光がトランジスタ近傍を通過する構造のため、光によるトランジスタのソース・ドレインリークが生じやすく、画素電位がリークしやすい課題があります。画素電位がリークすると、画面のちらつきやざらつきなど画品位を低下させる要因となります。プロジェクターが高輝度であるほど、光の影響も大きくなるため、プロジェクターの高輝度化にはトランジスタの高い耐光性が必要です。そのため、最新世代では、トランジスタの表面・側面・裏面に遮光構造を採用し、さらに従来の平面構造を積層構造にすることで従来比70%アップの保持容量を達成しています。
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