X線イメージセンサー
元素分析や構造解析等のX線計測の効率化・高度化に貢献
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概要
IMX711は、X線や電子線を直接受光する直接変換積分型CMOS方式を採用したX線イメージセンサーです。
独自の技術により高速撮像と低ノイズ性能を両立し、従来の積分型では困難であった微弱な一光子信号検出を実現しました*1。
低照度条件下での一光子レベルの検出から高照度条件下での安定した高精度測定まで、従来よりも広いダイナミックレンジでの計測を可能にします。
一度の撮像で、エネルギー・空間・時間情報を取得することができるため、先端デバイスの検査や材料科学・生命科学などの科学計測において、測定精度の向上、測定スループット向上、後段処理の自由度向上に貢献します。
*1) 本製品の開発は、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社と理化学研究所が共同で行いました。理化学研究所の初井宇記博士により発案された画素構造をもとに、実用的なX線イメージセンサーとして成立させるために必要な、高感度化および高いX線照射耐性と高電圧耐性の実現などの技術開発に共同で取り組みました。また、当社は、回路技術のほか、製造プロセスやパッケージング技術を開発することで、本製品の量産を実現しました。
特長
業界最高速度*2の撮像と低ノイズ性能の両立
独自の技術により、積分型X線センサーとして業界最高の高速撮像と、極めて低いランダムノイズを両立しています。
X線計測の分野では、光子を1つずつ識別し計数する光子計数型方式と、蓄積時間内に入射した光子の総エネルギー量を出力する積分型方式が、用途に応じて使い分けられてきました。光子計数型方式は、しきい値を用いてノイズ成分を除去できるため低照度での信号検出に有利である一方、積分型方式は蓄積された信号をすべて出力するため、高照度での信号検出に適しています。
IMX711は、理化学研究所初井宇記博士らとの共同開発によって高速撮像と低ノイズ性能を両立し、従来の積分型では困難であった微弱な一光子信号検出を実現しました。これにより、用途や測定条件に応じた多様な後段処理が可能です。
*2) 積分型X線CMOSイメージセンサーとして。ソニー調べ(2026年6月広報発表時)。
低照度条件下での光子エネルギー情報を利用可能
IMX711は、従来の積分型方式ではノイズに埋もれやすかった微弱な一光子レベルの信号を安定して取得できます。また、信号のばらつきを抑えた低ノイズな読み出しにより高いエネルギー分解能を実現し、光子エネルギー情報を解析に活用することが可能です。
測定前にしきい値で解析対象のエネルギー範囲を限定する必要がないため、取得したすべての光子エネルギー情報を後段解析に利用できます。
これにより、一度の測定データから、さまざまな目的に応じて自由にエネルギー範囲を選択して解析を行うことができ、解析プロセスの効率化や高度化に貢献します。
IMX711は積分型を採用しているため、光子計数型に見られる光子の数え落としが発生せず、高照度条件下においても線形応答を保ったデータを取得できます。
さらに、高速撮像により1フレームあたりの信号蓄積量を低減できるため、従来の積分型方式より信号の飽和を抑えることができます。
この信号出力と読み出し時のゲイン情報を活用することで、後段のデジタル処理により低照度から高照度までの信号を一貫して扱える広いダイナミックレンジのデータ再構成が可能です。
これにより、センサ内に入射光子数の大きく異なる画素が同時に存在するX線測定においても、再現性の高い高精度な測定データ取得に貢献します。
スペック
*1) Black pixels
*2) 評価数値。センサー内部の動作温度が20℃の環境下における、センサー有効領域内の画素の実測の平均値。
X線感度特性
活用事例
結晶構造解析と元素分析の同時測定
新しい電池材料や半導体材料を開発する際、「原子がどう並んでいるか(構造)」と「どんな元素でできているか(組成)」の両方を知ることが重要です。
従来は異なる検出器を用いて別々に測定する必要がありましたが、IMX711を搭載することで構造と組成を一度に測定できるようになります。材料の結晶構造を調べながら、構成元素も確認できるため、分析プロセスの大幅な効率化に貢献します。
IMX711は一光子あたりのエネルギー値を取得できるので、X線のエネルギースペクトル (b) と物質からの散乱強度分布 (c) を同時に測定することが可能です。
これらの情報を利用することで、組成情報を加えた結晶構造 (d) を推定できます。
金属フィルターを使わない高精度な結晶構造解析
X線を用いた結晶構造解析では、測定したい信号に対して、試料から発生する蛍光X線やX線源に由来する不要な波長成分がノイズとなり、測定精度低下の要因になります。従来は、金属製のフィルターを追加してこれらのノイズを遮断していましたが、必要なX線波長も減衰させるため測定効率が低下します。
IMX711は測定後のデータ処理で必要な信号を抽出できるため、フィルターを使用する必要がなく、X線強度を損なわない高精度な測定に貢献します。
IMX711は一光子あたりのエネルギー値を高分解能で取得するため、X線回折測定において解析の妨げとなる波長帯の信号を除去することができます。
全エネルギー領域では不要なCu-Kβ線の信号が含まれていますが、解析に必要なCu-Kα線のみを選択してデータ処理することが可能です。
元素のカラーマッピング
IMX711は一光子あたりのエネルギー値を高分解能で取得できるため、エネルギーの近い元素の識別や、吸収係数が近い物質を識別できます。蛍光X線分析をはじめ、ラジオグラフィ(2D)やX線CT(3D)での元素マッピングが可能です。不良解析における異物元素の位置特定、絵画の下絵調査など、幅広い用途に対応します。
薄膜材料分析の測定効率向上
半導体の薄膜材料の品質評価に用いられるX線反射率測定では、薄膜表面からの反射X線強度を測定することで、膜厚や密度、表面粗さなどをナノメートル精度で評価します。この測定では、薄く強い表面反射カーブから微弱な散乱までをとらえる必要があり、従来は条件を変更しながら複数回測定を行っていました。
IMX711は広いダイナミックレンジにより、1回の測定で全角度範囲のデータを取得できます。測定時間の大幅な短縮と、同一条件での測定による定量精度の向上に貢献します。
このグラフは、IMX711でX線反射率曲線を取得し、理論モデルでフィッティングした結果です。
測定には、Cuターゲットの回転対陰極型X線源(9kW)を使用しています。
測定結果と理論曲線がよく一致しており、8桁におよぶX線強度を正確に計測できていることがわかります。
関連する分野
高速動体検査の測定効率向上
半導体や電池製造における検査では、搬送中やステージ移動などの高速動作環境でも安定した画像取得が求められます。
IMX711は、高速撮像と低ノイズ性能により、動体環境下においても高精細な画像取得を実現します。これにより、検査工程における高精度化とスループット向上の両立に貢献します。
| 被写体 | SDカード |
|---|---|
| 回転速度 | Rotating at 2 revolution/s Moving at 70 m/min |
| X線源条件 | ターゲット:Mo(モリブデン) 管電圧:40 kV 管電流:140 mA |
Captured at 17.4 k fps
出典: 理化学研究所
※本製品の販売は、輸出貿易管理令別表第3に定める「グループA」地域に限定されます。
資料ダウンロード
IMX711-AABY 製品概要
製品の概要や特長、仕様をまとめた資料です。