ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社(以下、SSS)は、高解像度および高速性を同時に両立する車載LiDAR(ライダー)向け積層型直接Time of Flight(dToF)方式のSPAD距離センサー『IMX479』を商品化します。
本製品は、ラインスキャン方式の精度を高めるために最小3×3(水平×垂直)のSPAD画素の組み合わせを1dToF画素として用いています。また、独自のデバイス構造により、520dToF画素の高解像度※1のSPAD距離センサーとして最速※1となる20fpsのフレームレート※2を実現します。
先進運転支援システム(ADAS)や自動運転(AD)の普及に求められる、車載LiDARの高解像度かつ高速な測距性能を実現し、安心・安全なモビリティの未来に貢献します。
※1: SSS調べ(2025年6月10日広報発表時)。
※2: フレームレートは、水平方向のFoV(Field of View)や解像度により変動します。
車載LiDAR向け積層型dToF方式のSPAD距離センサー『IMX479』
型名 | 量産出荷時期 (予定) | サンプル価格 (税込)※3 |
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1型(対角15.8mm) |
2025年秋 |
35,000円 |
※3: 取扱数量などにより変わります。
モビリティが自律的に運転操作を行う自動運転レベル3以上の実用化に向けて、道路状況や車両、歩行者など対象物の位置や形状を高精度で検知・認識可能なLiDARの重要性が高まっており、さらなる技術進化が求められています。SPAD距離センサーはLiDARの測距方式のうち、光源から対象物に反射して戻ってくるまでの光の飛行時間(時間差)を検出することで距離を測定するdToF方式のデバイスの一つとして用いられています。
本製品は、SSSがCMOSイメージセンサー開発で培ってきた裏面照射型、積層型、Cu-Cu(カッパー・カッパー)接続※4などの独自技術を採用しています。今回新たに開発した測距処理回路とdToF画素を1チップ化することで、10μm角の微細な画素サイズと、520dToF画素の高解像度ながら20fpsの高速フレームレートを実現しました。
※4: 画素チップ(上部)とロジックチップ(下部)を積層する際に、Cu(銅)のパッド同士を接続することで電気的導通を図る技術。画素領域の外周の貫通電極により、上下のチップを接続するTSV(シリコン貫通電極)に比べて、設計自由度や生産性の向上、小型化、高性能化などが可能。
<主な特長>
■520dToF画素のSPAD距離センサーとして最速※1となる20fpsのフレームレートを実現
本製品は、裏面照射型のdToF画素を用いた画素チップ(上部)と、新開発の測距処理回路などを搭載したロジックチップ(下部)を、Cu-Cu接続を用いた積層構造により1チップ化しています。これにより、10μm角の微細な画素サイズで520dToF画素の高解像度を実現しました。さらに、今回新開発の測距処理回路は、複数処理を並列化し、高速処理性能を向上させています。
これらの技術により、520dToF画素のSPAD距離センサーとして最速※1となる20fpsのフレームレートを達成しています。また、垂直方向における0.05度相当の角度分解能を実現し、垂直方向の検知精度を従来比※5で2.7倍に向上させました。車載LiDARで重要となる立体物検知において、250m先にある高さ25cmの物体(タイヤ等の道路上の落下物を想定)も立体物として検知することが可能です。
※5: 当社の1/2.9型有効約10万画素のSPAD距離センサー『IMX459』との比較。
■5cm間隔での高い距離分解能を実現
今回、距離分解能を高めるために開発した独自回路は、各SPAD画素のデータを個別に処理し、距離を算出します。これにより、LiDARの距離分解能を5cm間隔まで向上させることに成功しました。
■37%の高い光子検出効率により、最長300m先にある対象物でも検知可能
本製品では、画素における光の入射面と底面に凹凸を設け、さらにレンズ形状を最適化しました。入射光を回折させて吸収率を高めることで、車載LiDARのレーザー光源として広く普及している940nmの波長に対して、37%の高い光子検出効率を実現しています。これにより、100,000lux以上の高照度の背景光環境においても、最長300m先にある対象物を高精度に検知・認識することができます。
SPAD画素の断面構造
型名 | IMX479 | |
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有効SPAD画素数 | 105(H)×1,560(V) 約16.4万画素 | |
垂直方向有効dToF画素数 | 520 dToF 画素 | |
イメージサイズ | 対角15.8 mm (1型) | |
推奨光源波長 | 940 nm | |
SPADユニットセルサイズ | 10.08 μm(H)×10.08 μm(V) | |
エレメントサイズ(dToF画素単位) | 最小3(H)×3(V) | |
光子検出効率 | 37 % (940 nm波長) | |
応答速度 | 約6 ナノ秒 | |
電源電圧 | SPAD降伏電圧 | -20.5 V |
SPAD過剰電圧 | 3.3 V | |
アナログ | 3.3 V | |
デジタル | 1.125 V | |
インターフェース | 1.8 V | |
インターフェース | MIPI CSI-2シリアル出力(4 lane) | |
チップサイズ | 12.2 mm(H)×20.0 mm(V) | |
最大検知距離 | 300 m | |
300 m測距時の距離精度 | 最小5 cm相当 |
<本製品評価用メカニカルスキャンLiDAR>
ソニーは、本製品評価用として、本製品を搭載したメカニカルスキャン方式※6のLiDARを開発し、顧客やパートナーに向けて提供を開始します。これにより、顧客・パートナーでのLiDAR開発、本製品の評価に貢献します。
なお、本製品評価用のLiDARは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業「電動車等省エネ化のための車載コンピューティング・シミュレーション技術の開発/自動運転センサーシステム」における成果です。
※6: 固定されたレーザー光源からのビームを、回転するミラーで反射させて広範囲に水平走査する方式。