鈴木 彰
部當 勝彦
鈴木 彰
部當 勝彦

CORPORATE

サステナビリティ

音楽で紡ぐ地域と企業の絆。
熊本を舞台にしたソニー・フィルハーモニック・オーケストラ特別記念公演に込めたエールとは

2025.04.30

ソニーグループの社員、OB・OG、そしてその家族からなるアマチュア管弦楽団、ソニー・フィルハーモニック・オーケストラ(以下、ソニーフィル)が2025年に創立30周年を迎えました。この記念すべき年の3月15日、ソニーグループの半導体事業の重要な拠点であり、地域社会との深いつながりを持つ熊本県で特別記念公演を開催しました。公演開催にあたっては、熊本県立劇場でのコンサートのほか、地元小・中学校の吹奏楽部を交えた合同リハーサルなど、地域との交流を深めるさまざまな取り組みが行われました。

今回は、創設期から楽団に携わるソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社(以下、SSS)の鈴木彰と、熊本県での公演を支援したソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社(以下、SCK)の部當勝彦にインタビューを実施。記念公演開催の背景や、地域住民や次世代との交流の詳細、そして地域貢献への想いを伺いました。

鈴木 彰

鈴木 彰

ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
第3研究部門

部當 勝彦

部當 勝彦

ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社
総務部門

30周年記念公演に、開催地を熊本に選んだ背景

―― ソニーフィルの概要を教えてください。

鈴木

ソニーフィルは、ソニーグループ各社の社員や、OB・OG、家族など、約110名が所属するアマチュア管弦楽団です。社内のクラブ活動の中でも特に人数が多く、SSSからは約20名が参加しています。音楽と深い関わりを持つソニーにおいて、オーケストラを創設したいという機運が高まり1995年に有志で集結。翌1996年1月には第一回演奏会を開催し、活動がスタートしました。以来、2年に3回程度の定期演奏会を開催しており、今年で創立30周年を迎えました。
私は1995年の創設期から活動に携わっています。当時、オーケストラに必要な全ての楽器奏者が自然と過不足なく集まった光景は今でも鮮明に覚えています。音を社名の起源とするソニーらしい出来事だったと思いますし、現在でも多様な人材と楽器が集まっていると感じます。

―― 創業30周年を迎える記念すべき年に、演奏会の開催地を熊本県にした理由を教えてください。

鈴木

ソニーグループ全体にとって、熊本県は重要な存在です。なぜなら、半導体関連企業が多く集まる菊陽町に位置するSCK熊本テクノロジーセンターは、グループの重要な生産拠点の一つとして事業を支えているからです。音楽性の高さを追求することはもちろん、私たちの演奏が社会貢献につながるという意識が団員のモチベーションにもなっており、半導体産業への貢献、地域社会の活性化、そして音楽を通じた心の癒やしを提供したいという思いから、熊本県での記念公演を企画しました。

音楽で熊本をエンパワーメント。
記念公演と次世代との合同演奏で実現した、ソニーならではの文化交流

―― 熊本県立劇場での記念公演について、演奏内容や選曲理由を教えてください。

鈴木

選曲は、最も熟考を重ねた部分ですね。普段の演奏会では、ベートーヴェン、ブラームス、チャイコフスキーといった、いわゆるクラシックのプログラムが中心です。しかし、今回はクラシックに馴染みのない社員、ご家族、お子さま、そして関係企業の皆さまにもご来場いただきたかったので、クラシックのコンサートでありながらも聞きやすく、気軽に楽しんでいただけるようなプログラム構成を意識しました。

今回の指揮者である新通英洋先生はジョン・ウィリアムズの映画音楽をフルオーケストラで演奏することに長けていました。そこで、ジョン・ウィリアムズの映画音楽から、「ハリー・ポッターと賢者の石」「インディ・ジョーンズ」「E.T.」「スター・ウォーズ」の楽曲をセレクト。また、誰もが一度は耳にしたことがあるアントニン・ドヴォルザークの交響曲第9番『新世界より』より第2・第4楽章を抜粋するという構成でプログラムを組みました。

―― 記念公演の前日には、菊陽町図書館ホールで近隣学生を招いての公開リハーサルが実施されました。この取り組みを行った背景や当日の様子を教えてください。

鈴木

熊本県は吹奏楽の部活動が盛んな地域で、国内のコンクールで優秀な成績を収める小中学生が多くいます。地方都市の場合、フルオーケストラに触れる機会がなかなかないと思いますので、リハーサルの際に吹奏楽部の生徒たちがオーケストラの各パートに加わって一緒に演奏できれば、特別な機会になるのではないかと考えました。

部當

生徒の招待にあたっては教育委員会にも相談をしました。そこで想像以上に好意的な反応をいただき、その結果4つの中学校と2つの小学校から生徒約80名が参加してくださいました。事前に生徒たちにはパート別の楽譜を渡して練習してきてもらい、オーケストラに構成されていないサクソフォーンなどの楽器の生徒も参加できるよう譜面の書き直しも行いました。リハーサル当日は、最初生徒も団員も緊張した様子が見られましたが、時間が経つにつれて音楽に一体感が出ていたのが印象的でしたね。最後の方では生徒から積極的に団員に質問している場面も見られて、貴重な体験となっていると感じました。

(合奏の様子。指揮者である新通英洋氏が生徒からの質問に答えるシーンも)
(タクトを手にとり、オーケストラの指揮を体験できる時間も設けられた)

―― 両公演を通して、地域貢献につながっていると感じたことや心に残ったことはありますか。

鈴木

普段はイメージセンサーなどの技術開発に従事している中で、このような文化的な交流の機会は貴重であり、まさにソニーらしい試みだと感じています。熊本県立劇場の記念公演では約1800人もの満員のお客さまの前で演奏でき本当に幸せでしたし、前日の公開リハーサルでは、未来を担う世代と交流でき、有意義な経験となりました。生徒たちの中から一人でも多く、「音楽って楽しい」「楽器を続けたい」と感じるきっかけになってくれたなら、これほどうれしいことはありませんね。

部當

地元の生徒たちとの公開リハーサルに加えて、記念公演当日のリハーサルの様子を客席から見学していただく試みも行いました。これは、社員の福利厚生の一環としてファミリーデーのような要素を取り入れたいという思いから企画しました。当日は約50名が参加し、未就学児がいる家族にも楽しんでいただくことができました。

―― 記念公演を鑑賞された方の声や感想を教えてください。

鈴木

学校、自治体、周辺企業、地元住民など、多くの方に足を運んでいただきましたが、演奏を聴いてそのレベルの高さに驚き、大変感動したという声がたくさん寄せられました。クラシックに馴染みのない方からも「映画の世界に入り込んだような臨場感あふれるコンサートでした」「生演奏を聴いて豊かな気持ちになりました」といったうれしい感想をいただいています。改めて、今回のプログラム構成にして良かったと感じています。

熊本との地域共生に向け、小さな活動を積み重ねていきたい

―― 熊本県は、SSSグループにおけるイメージセンサーの製造拠点の一つですが、熊本県とのつながりをどのように考えていますか。また、地域貢献活動について具体的な取り組みを教えて下さい。

部當氏

地域共生に関しては、普段からさまざまな取り組みを行い「つながり」を大切にしています。熊本テクノロジーセンターの社員による簡易ツールを使用したプログラミングの授業を通じて会社内容紹介を行ったり、、近隣企業と連携し合同で行う通学路の誘導、地域の清掃、会社の夏祭りへの地域住民・企業の招待などがその例です。

他に、熊本県は「水どころ」として有名で、熊本市内の水道水はすべて地下水を利用しています。半導体の製造工程では大量の水を使用するため、地下水の保全は重要な課題です。そこで、田植え前の水田など作物を植えていない期間の田畑に水を張り、浸透させて地下水に還元する「地下水涵養(かんよう)」事業にも取り組んでいます。また、社員による田植えを実施し、環境意識の向上を図るなど、地元農家や行政、環境NPOの皆さんと協力しながら、水資源保護に向けた活動を推進しています。

―― 創立30周年記念熊本公演を終えて、学びや発見、感想をそれぞれ教えて下さい。

鈴木

ソニー・フィルハーモニック・オーケストラとして、今回このような機会をいただき感謝でいっぱいです。団体としては、2008年のニューヨーク・カーネギーホールでの演奏旅行以来17年ぶりの遠征となりました。大半の団員にとって初めての遠征経験だったこともあり、数日間共に過ごしたことで結束力もより高まりました。

また、SSSグループ以外の団員も多く所属しているため、熊本テクノロジーセンターがどのような場所なのか詳しく知らない社員や家族も少なくありませんでした。そこで、工場見学の機会を設けて、ソニーのイメージセンサーの強みを改めて知ってもらうこともできました。演奏会で配布したプログラムにはSSSグループの会社紹介も掲載させていただき、約1800名のお客さまにSSSグループという会社を認知していただく良い機会になったと感じています。

(演奏終了と同時に、会場は温かい拍手に包まれた)

部當

単に演奏を披露するだけでなく、前日リハーサルでの地元小中学生との合奏や団員向けの工場見学会、当日リハーサルの家族見学など、さまざまな交流の機会を設けられたことに非常に意味があったと考えています。準備は大変な部分もありましたが、メンバーが団結して一つひとつに思いを込めて取り組めたので大きな達成感を得られました。

演奏者の方々にとっては、本来演奏会に集中したいところだったと思いますが、ご協力いただき、あえて時間をかけてこれらの企画を盛り込んだことで、地域の方々に深く印象づけることができたのではないかと思います。

―― SSSグループとして、今後熊本県の地域との信頼関係をどのように構築・維持していきたいと思っていますか。

鈴木

普段は東京で勤務しているため、熊本県への遠征が叶ったことで生産拠点で働く多くの仲間と貴重なつながりを持つことができました。何より、皆で協力し合い普段は行わないような試みにチャレンジすることで、熊本県の地域・住民の皆さまとの絆が深まる素晴らしい機会になったと感じていますし、このご縁を今後も維持していきたいです。また、今回の記念公演に来ていただいたお客さまがソニーのファンになってくださり、今後の地域活性化に少しでも貢献できたのであれば幸いです。

部當

私たちが日常的にできることは、今回の公演のような特別なイベントばかりではありません。今後も地域の方々との関係を絶やさず、先程お話した日々の交通誘導や涵養事業など、小さな活動を積み重ねていくことが最も重要だと考えています。一人ひとりの方と直接お会いする機会は限られていますが、そうした貴重な機会には地元の方と丁寧に向き合い、対話を重ねていくことを大切にしていきたいです

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