Earth Day(アースデイ)に考える地球環境の未来。ソニーセミコンダクタソリューションズのサステナビリティ活動
2025.04.22
4月22日の「Earth Day(アースデイ)」は、地球環境について考え、行動する日として世界中で広がっています。地球温暖化、森林破壊、海洋汚染、生物多様性の喪失など、地球は多くの問題に直面しており、企業の環境問題への対策はますます重要になっています。ソニーは1970年代から環境保全活動を継続しており、2010年には長期環境計画「Road to Zero」を策定。この方針の下、ソニーセミコンダクタソリューションズグループ(以下、SSSグループ)も持続可能な社会の実現に向けてさまざまな活動に取り組んでいます。 本記事では、Earth Dayを迎えるにあたり、SSSグループのサステナビリティ方針と、その具体的な活動について紹介します。
環境負荷低減と持続可能な社会の実現をめざす「Road to Zero」
ソニーグループが持続的に社会価値を創出し進化していくためには、「人・社会・地球」が健全であることが不可欠です。2010年にソニーグループは、2050年までに環境負荷ゼロをめざす長期環境計画「Road to Zero」を策定し、「責任」と「貢献」の両面からさまざまな取り組みを推進しています。「責任」は環境負荷などを減らすために企業としての責任を果たしていくこと、「貢献」は社会や環境の課題解決に貢献する技術開発や事業に取り組むことと定義し、グループ内の多様な事業がそれぞれの特性を生かした活動を行っているのです。
人びとが豊かさと感動に満ちた生活を送れるように。SSSグループがめざす7つの社会像とは?
SSSグループは、イメージセンサーを主力とする半導体の開発・製造の多くを自社で行っています。そのため、自社工場での電力や水の消費がソニーグループの中では最も大きく、グループ全体の事業所での温室効果ガス排出量の約8割を占めています。 SSSグループが2023年に策定した「サステナビリティ コンパス」は、「人・社会・地球」が持続可能であり続ける活動方針として、2030年を想定した「SSSグループのめざす7つの社会像」を定義しています。次世代へ美しい地球を引き継ぎ、社会課題を解決し、人々が豊かさと感動に満ちた生活を送れるよう支援するという想いが込められています。
環境と社会に寄り添う。サステナビリティ コンパスを体現する活動
SSSグループは、サステナビリティ コンパスの下、環境規制の遵守や環境ビジョンに沿った活動を行っています。その具体的な活動について、「7つの社会像」に沿ってご紹介します。
ネットゼロが実現されている社会
「ネットゼロが実現されている社会」は、温室効果ガスの排出量が、吸収量や除去量を差し引いて正味ゼロになった状態を指します。温室効果ガスの排出を可能な限り削減し、残りの排出を森林や技術による吸収・除去で相殺するのです。SSSグループでは、事業所による再生可能エネルギーの導入や省エネルギーの推進を通じて、ネットゼロ実現をめざしています。
再生可能エネルギー導入を強化する「太陽光発電」
SSSグループは、環境負荷低減に向けた太陽光発電設備の導入を積極的に進めています。イメージセンサーの生産拠点である熊本テクノロジーセンターでは、2019年3月に1号棟屋上に約1.1MWの設備を稼働させ、2022年3月には2号棟屋上に約1.8MWの設備を追加しました。両設備を合わせて年間約3,300MWhの電力(一般家庭の年間使用電力量 約700世帯分)を発電し、事務所棟の電源やクリーンルームの空調用に使用しています。さらに、長崎テクノロジーセンターや大分テクノロジーセンターへの導入も検討中です。
ソニーグループでは、2030年までに自社オペレーションにおける直接・間接排出(スコープ1・2)をカーボンニュートラルとし、2040年にはスコープ1・2に加えて、製品、サプライチェーン、物流などその他の排出(スコープ3)対象とし、全スコープにおいて排出量実質ゼロとすることを目標に掲げています。SSSグループでは、事業所における再生可能エネルギー導入と省エネルギー推進を通じて継続的な環境負荷低減に取り組み、スコープ1・2の目標達成に向けて貢献していきます。
熊本テクノロジーセンター 左から2号棟、1号棟
消費電力や通信コスト削減を可能にする、AI処理機能を搭載したイメージセンサー技術
世界で初めてAI処理機能を搭載したインテリジェントビジョンセンサーIMX500は、画像処理に加えて高速なエッジAI処理までを1チップで行うことができます。イメージセンサーが取得した画像から必要な情報(メタデータ)だけを出力できるため、クラウドへのデータ転送量と送信後のデータ処理量を大幅に削減でき、消費電力や通信コストの削減を可能にします。このAI処理機能とSSSグループの強みであるイメージセンサー技術を生かし、現在は小売業界や産業機器業界をはじめとするさまざまな分野における生産性向上に貢献しています。
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資源を廃棄せず、リユース、リサイクルされている社会
「資源を廃棄せず、リユース、リサイクルされている社会」は、3R(Reduce、Reuse、Recycle)を基盤にした循環型社会を指します。この社会では、資源の消費を抑え、物質の効率的な利用を進め、廃棄物を最小限に抑えることが期待されます。SSSグループでは、製品ライフサイクルにおける廃棄物負荷低減や、資源のリサイクル/有効活用に取り組んでいます。
より多くの再生材を活用しながら高品質なものづくりを支える”SORPLAS”
“SORPLAS”(Sustainable Oriented Recycled Plastic/ソープラス)は、SSSグループが開発した環境配慮型の難燃性再生プラスチックです。使用済みの水ボトルや、工場や市場から排出された光廃ディスクなど最大99%の再生材を原料に作られており、ソニーの製品に限らず幅広い製品に採用されています。独自開発した難燃剤(プラスチックを燃え難くする添加剤)を極微量添加することで、高い耐久性と難燃性を実現しています。
SORPLASの主な活用事例として、ソニー製品では、液晶テレビ ブラビアのリアカバー、スマートフォン Xperiaの内部部品、デジタルカメラやビデオカメラの外装や内部部品などに利用されています。さらに、ソニーグループ外の製品への採用が広がっており、テレビ、スマートフォン、コンピューター、照明器具、オフィス用品など、幅広い製品への採用が進んでいます。
SORPLASの使用により、製品製造時のCO2排出量を従来の難燃性バージンプラスチック比で約72%削減できるため、環境負荷の低減に大きく貢献することが可能です。今後も環境へのさらなる貢献をめざし、開発を進めていきます。
グローバルシャッター方式イメージセンサーにより、効率的な資源循環システムを実現
近年、資源消費と廃棄物の発生を極小化する循環型経済の実現に向けて、世界中の多くの企業が取り組みをスタートしています。ノルウェーで設立されたTOMRA社は、使用済みペットボトルの自動回収機を開発・提供し、高品質な飲料容器に何度もリサイクルすることを可能にしています。この自動回収機には、高速な物体を撮影することを得意とするグローバルシャッター方式イメージセンサーが搭載されており、高速で移動する飲料容器を歪みなく撮影し、素材や形状、バーコードなどの情報を瞬時に読み取ることができます。これにより、自動回収機は正しい保証金や特典の還元を行ったり、分別回収した容器を圧縮して輸送したりすることで、効率的な資源循環システムを実現しています。
豊富な食糧・水がすべての人々に行き渡っている社会
「豊富な食糧・水がすべての人々に行き渡っている社会」は、食料安全保障と水資源の公平なアクセスが確保されている社会を指します。SSSグループでは、事業所による水利用効率改善・環境活動を行っています。
使用した地下水を還元する「地下水涵養」
半導体の製造には大量の水を必要とします。イメージセンサーの生産拠点である熊本テクノロジーセンターでは、熊本地域の豊かな地下水源を保全するため、「使った水はきちんと戻そう」をスローガンに、田植え前の水田など作物を植えていない期間の田畑に水を張り、浸透させて地下水に還元する「地下水涵養」を2003年から実施しています。2023年度には年間約357万トンの水を涵養し、地下水採取量を上回る成果を上げました。この取り組みは日本企業初の試みで、現在では他企業にも広がっています。
また、従業員による田植えや稲刈りを毎年実施し、環境意識の向上を図っています。地元の農業協同組合や土地改良区との協力のもと、地域の水資源保護に大きく貢献しており、その成果は各方面から高く評価されています。
安全で効率的な社会/交通インフラが整っている社会
「安全で効率的な社会/交通インフラが整っている社会」とは、人々が安心して移動でき、効率的かつ環境負荷の少ない交通手段が利用できる社会を指します。SSSグループでは、センシング技術を活用した自然災害予知や、交通モニタリング、自動運転技術による省力化などに取り組んでいます。
安心・安全・快適なモビリティ社会の実現に貢献する車載用センサー
ADAS(先進運転支援システム)と自動運転を実現する重要な役割を担う技術の一つとして、「自動車の眼」となる車載用センサーが欠かせない存在になっています。SSSグループは、車内外360°を繭で守るような安全性を提供するという「Safety Cocoon」というコンセプトの下、車の周囲の状況をリアルタイムで感知し、安全な運転を支援するさまざまな車載用センサーを提供しています。たとえば、LEDのちらつきを抑える機能と、明暗差の激しいシーンでも正確な認識を可能にする広いダイナミックレンジ(HDR)撮影を同時に実現する車載用CMOSイメージセンサーや、小型ながら高精度かつ高速な測距で遠方の物体検知ができる車載LiDAR用SPAD距離センサー、ドライバーや乗客の状態をモニタリングし車内の安全性と快適性を提供するインキャビンセンシングなどがあります。ADASや自動運転の進化により、交通渋滞の緩和や事故の削減が期待されるとともに、交通インフラ全体の効率化が進むことで、環境負荷低減にもつながります。SSSグループの車載用センサーは、安心・安全・快適な交通インフラの構築に貢献していきます。
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Earth Dayに寄せて。ステークホルダーの皆さんへのメッセージ
今日は、地球を守り、未来を後世に引き継ぐために世界中で祝われるEarth Dayです。この日を通じて、私たちは地球環境の重要性を再確認し、持続可能な社会を目指す取り組みを強化する機会を得ています。
SSSグループは「テクノロジーの力で人に感動を、社会に豊かさをもたらす」というミッションのもと、環境負荷低減と同時に利益創出も実現する、長期視点の経営を推進しています。 私たちは、業界に先駆けたさまざまな取り組みを行っており、それらは企業としての責任だけではなく、新たな価値創造につながると考えています。
Earth Dayという特別な日に際し、このメッセージがすべてのステークホルダーとの共感と協働へつながり、一人ひとりが持続可能な未来へ向けた一歩を踏み出すきっかけとなることを願っています。
ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社 代表取締役社長CEO 指田慎二